あの、世界ではじけた家庭用ゲーム機「ファミコン」の音楽を演奏する集団。ファミコンバンド、略してFCB。 僕らが熱中したファミコン。 今でも耳に残るあのメロディー。その名曲の数々が、ファミコンバンドのサウンドで、ここに蘇る! 最新作から懐かしの一品まで! あの名作から忘れかけていたクソゲーまで! 熱い感動よ再び!
FCBが結成されたのは1994年の秋。当時メンバーが所属していた大学サークルの学園祭でデビューを果たした。どういういきさつで旗揚げしたか、
もう朧げだが、メンバーが一人暮らしするアパートでファミコンをやりながら、「ファミコンの曲をバンドでやりましょうぜ」と言う会話から始まったのだと思う。
当時のメンバーはフルート、EWI、キーボード、ベース、ドラムの5名。短期間で仕上げ、演奏した楽曲は、忍者くん、ツインビー、ゼビウス等、
とってもシンプルでいて味のあるプログラムの初舞台であった。しかし、曲目が渋すぎて、と言うかファミコンをやっていない人には何が良いのかよくわからない。
それ故に一般的な支持は少なく、最初のステージでは観客は2名のみで奏者よりも少ない状態であった。
しかし、メンバーはこのステージで確かな手応えと満足感を得て、
翌年以降も活動を続けることになる。この「好きな曲をやりたいようにやる、ただそれだけ。」という方針は今でも変わっていない。
この頃の譜面は全て手書きであった。またゲーム中の音を採譜する為に、
ファミコン実機でプレイをし、アイテムを取らずに(パワーアップをするとBGMが変わるため)ひたすら逃げまくるなどの作業が黙々と行われていた。今に比べると非常にアナログな作業であった。
結成2年目にはメンバーが倍増し、ホーンセクションが充実してきた。思った以上に“こういうの”が好きな人が周りに多かったようだ。
この年、「アーバンチャンピオン」の演奏中にメンバーが自然と殴り合いを始めた(いや、殴り合いじゃないな、一方的な攻撃だった気がする。
殴る方も殴られる方も、お互い笑ってはいるが、パンチには本気で力を込めていた。多分、リアルさを追求していたんだと思う。)。
これがFCB寸劇演出の始まりで、以降、曲に合わせてキャラを入れる演出が定着した。今ではFCBの特徴の1つになっており、ライブでは2面を中心に多様な演出を試みている。
4年目の秋。この頃にはメンバーも更に増え、バンドの編成も吹奏楽の編成に近くなっており、楽曲も3音だけで構成されたファミコンだけでなく、スーパーファミコンやプレイステーションのものも扱うようになっていた。活動を続けていると、当然のことだが学生であったメンバーが大学を卒業する時が来る。普通であればこんな趣味100%のバンドは卒業と同時に解散し終了となるものだが、そうはならなかった。
ある晩、某音楽監督と某初代代表は当時行きつけであった、高田馬場の居酒屋春夏秋冬で顔を突き合わせてライムサワーを飲んでいた。
「ファミコンバンドをホールでやりたいんすよ。」
「マジで?」
「マジで。」
「いいよ(笑)、やろう。」
面白いことが始まった。今でこそ多くの団体がゲーム音楽のライブやコンサートを各所で開催しているが、当時アマチュアがファミコンと言うマニアックな音楽だけでコンサートを開くなんて聞いたことが無い。やると決めてからは色々忙しかった。音楽監督は譜面の製作(手書き)。運営は会場と練習場所を探して予約して。練習の度に親の車借りてドラムセットを積んで運んで。無名の団体だから、高田馬場の駅前や秋葉原の路上でパフォーマンスとビラ配りもした。ビラを受け取った人に「何だこれ? こんなのやるの?!」と珍しがられた。3面のシンフォニックステージはこれまでに無い、吹奏楽フル編成でのアレンジ。手探りの状態で準備と練習を重ねていった。
そして1998年3月24日、成増アクトホールにてFCB 1st「の謎」を開催。入場者数は128名。2面の寸劇も大ウケ、何よりも好きな曲を演奏しての大成功。苦労も吹っ飛ぶプライスレス。
調子に乗った我々は翌年1999年5月4日に2回目の演奏会、FCB2nd「の10倍プロ野球」を開幕。メンバーの日頃の行いを暗示する『超大雨』の中、145人の観客に熱く見守られながら、これまた大成功のうちに終了。1stライブよりも演奏・演出の両面において格段のレベルアップが見られ、客の心をがっちりキャッチした。 更に2000年5月5日には、FCB3rd「の食卓」を開催。メンバーは1stの2倍、40名に増強され、より高いレベルへ、二重の極みまで昇華。観客動員数は200人を突破する。2000年、ミレニアムの年、心のゲーム史に刻まれた。
21世紀を迎えたFCB。FCB4th「の花嫁」はメンバーのウェディングシークレットライブとして開催され、幻のライブとなった。大学生で始めたFCBも結成から数年たち、就職や結婚をする者も出てきてメンバーの核家族化が始まった。この先どうするかと思い悩んだが、やっぱりそこはFCB、2002年5月4日、再びホールに舞い戻った。1面から最高傑作ナムコメドレーでキャラ大放出の爆笑の渦が展開。FCB史上演奏ゲームソフト数最多をマーク。どこまで行くのかFCB。メンバーの夢が広がった。
2003年5月4日、FCBはビッグバンドスタイルに変えてのFCB6th「の花」を開催。洗練された演奏に、磨きを増したキャラ演出がFCBの世界観を広げた。後日、このステージの模様がファミ通で紙面化。ついに念願の『ファミ通に載って全国デビュー!』が達成!! 同時にうららのパンチラ効果に苦情殺到!! 反省を生かしてPOPEYEの取材を受けるなど、少しずつ陽の目を見始めた、この勢いで次々と更なる展開を……見せることは無く、空白の1年間を迎えた。沈黙の2004年。
この頃よりゲーム音楽を演奏する団体がちらほらと現れるようなるが、FCBの魅力をより大勢のお客様は伝えたい、FCBはまだ本気を出していないと若手メンバーが立ち上がった。そして2005年10月9日、FCB7th「の野望」開戦。FCBを求めていた魂はメンバーのみならず、全国で燃え上がり、ライブ会場では長蛇の列のフォーメーションZ。予想を上回る来場者にホールのキャパシティオーバーと言う嬉しい誤算の満員御礼。混沌の中で口火を切ったファミコンウォーズのシュプレヒコール…あの時、確かに会場は一つになった。ライブ後数日間、ネット上はFCBフィーバー! さらに、いつの間にか海外サイトにライブ動画がうpされ「Crazy!!」と絶賛を受けた! ヒアカムザニューチャレンジャー! FCBはついに世界に羽ばたいた。
そして7thの衝撃冷めやらぬ2006年7月9日、僅か9ヶ月の短スパンでFCB8th「の栄光」を開催! 肉は熱いうちに喰え! これまでのライブからセレクトした名作と新たにアレンジされた新作の最強の楽曲で構成されたステージは正に『BestofFCB!』。全3面180分のガチンコ勝負。松戸のホールで、1000人を越える観客&メンバーが心躍らせた。更にコナミコマンドにより隠れキャラ“しな○ち”が登場! 熱狂の一夜に甘くスパイシーな花を咲かせて、栄光の8th終了。
1000人の宴から2年が過ぎた2008年、FCBはより大きな舞台を求め、ステージをキョウブン(川崎市教育文化会館)に移す。ミューザ川崎の完成により、
音楽イベントがめっきり減ってしまったキョウブンであったが、キョウブンでしか出来ない事がある。舞台スタッフの力強い協力を得て、FCBは前進する。
2008年10月12日、FCB9th「の挑戦状」を開催。新旧のメンバーが集まり、過去最大のメドレーを引っさげて、過去最大規模のステージで、
伝説のクソゲーと数々の名作のラインナップ。果たしてついて来られたか? そう、これはFCBからの挑戦状!
そして、FCBの最初のホールライブである1stから12年。2010年10月17日にFCB10thAnniversaryLive「のさんすうあそび」を開催。
満を持しての大メドレイとFCB2ndからの再演となる組曲FF6をはじめ、名作名曲の数々を用意した。そしてもちろんFCBの真骨頂キャラクタ満載の2面も、
最強のバージョンアップ、熱血行進曲のバトルロワイヤルを完全再現。全てが前回を上回るステージとなった。観測史上最高の猛暑を吹き飛ばす、
熱きステージとなった10thAnniversaryLive。全国各地から1574名(FCB史上最高)を動員した。
その後も、2012年FCB11th
「の樹の下で」では、ときメモをセリフ付きで完全再現。2014年FCB12th Live in Kyobunでは、太鼓の達人、Live in PowerBowl、内藤九段将棋秘伝を再現する等、
ゲーム音楽の枠を超えたステージを披露する。お客様の大歓声、大拍手にメンバー一同大いに感動するのであった。
しかし、「始まりがあれば終わりがあるように,出会いがあれば別れがあるものです」。2008年のLiveから利用してきた、キョウブンのホールが閉鎖されることが遂に決定。これが最後との思いで、2016年10月30日、FCB13th「キョウブンに消ゆ」を開催!
FCB史上最多、1700名のお客様と最後の晩餐を迎えたのであった。
本拠地を失い途方に暮れる我々は流浪の民となる。そして、2年半の遥かなる旅路経て、ついに新たな音楽のまち「かわぐち」にたどり着いたのであった。 そして2019年5月FCB14th「の夜の鳥」を開催。メンバー1人が麻雀牌1つを表現してプレイ画面を再現する「麻雀」や、サウンドノベルを一切の説明なく再現する 「かまいたちの夜」など、音楽Liveの枠をこえた演出でかわぐちのお客様を魅了した。
かわぐちのまちで順風満帆みえたFCBであったが、2020年、世界はコロナウィルスにより闇に閉ざされ、FCBの活動も大幅に制限されてしまう。 世界中で勇者達が戦いを挑みすこしずつ光が見え始めた状況であるが、これまでと同じようなLiveの開催は困難である。しかし、このままFCBの火を消してしまうことできない。 今できる範囲でFCBを披露させてほしい。そんな思いを2021年9月FCB15thPreviewとしてお届けしたい。